キャピタルゲイン課税(資本利得税や譲渡所得税とも呼ばれます)とは、株式、債券、投資信託、ETF、事業、不動産などの投資資産を売却して得られた利益に対して課される税金です。課税される金額は、主にその資産の保有期間が長期か短期かによって決まります。
2026年度(令和8年度)のキャピタルゲイン課税
本年度の日本におけるキャピタルゲイン課税は、現行の申告分離課税(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%の合計20.315%)が維持される見込みです。ただし、NISA口座内での売却益は、制度要件を満たす範囲で非課税となります。非上場株式の場合も、原則として譲渡所得として課税されます。仮想通貨(暗号資産)の場合は、雑所得として総合課税(累進税率:約5〜45%+住民税10%)となります。これらの資産クラスについては、短期保有/長期保有の区別はなく、つまり保有期間にかかわらず一律に分離課税が適用されます。非上場株式についても、多くの場合は短期/長期の区別による税率差はありません。
不動産の譲渡所得税
不動産の譲渡所得税に限っては、保有期間によって短期と長期で税率が大きく変わります。原則として、5年以下の保有の場合は「短期」、5年を超える保有の場合は「長期」として譲渡所得が計算されます。なお、この5年のカウントは、譲渡した年の1月1日時点での保有期間によって判定されます。
短期譲渡所得税(保有5年以下)
- 税率39.63% = 所得税30% + 復興特別所得税0.63% + 住民税9%
長期譲渡所得税(保有5年超)
- 税率20.315% = 所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%
居住用財産の3,000万円特別控除・10年超所有軽減税率・買換え特例など、多数の特例があるため、実際の税負担は個別の計算になります。
米国株・米国ETF・米国籍投資信託のキャピタルゲイン課税
日本の税法では、日本の居住者は全世界所得課税の対象となるため、米国株式(NYSEやNASDAQに上場している
AAPL、
MSFT、
GOOGL、
AMZN、
NVDA、
TSLA、
METAなど)、
米国ETF(例:
SPY、
QQQなど)、および日本の証券会社を通じて購入する米国籍の公募投資信託の売却益(キャピタルゲイン)も日本で課税対象となります。これらの多くは「
上場株式等」の譲渡所得等として扱われ、原則として日本株と同様に申告分離課税20.315%が適用されます。
米国株・米国ETF・米国籍投資信託の配当金・分配金の税制度
米国での課税は、原則として非課税となりますが、配当や分配金については米日で二重課税(米国側で10%、日本側で20.315%)の対象となります。そのため、配当や分配金については、外国税額控除による二重課税の調整が必要です。
なお、NISA口座の売却益や配当金は非課税ですが、配当金に対する米国現地での10%の課税は発生します。
売却益や配当金は、それを得た時点の為替レートで円に換算され、円ベースの利益に対して課税されます。
米国株・米国ETF・米国籍投資信託の確定申告が必要かどうか
どの証券口座で持っているかによって違いがあります。
日本の証券会社:特定口座(源泉徴収あり)
売却時には、利益に対して20.315%が自動的に源泉徴収されます。また、同じ証券会社内の同じ区分の商品(日本株・投資信託・ETFなど)同士では、自動的に損益通算が行われ、年間取引報告書が発行されますので、原則として確定申告は不要です。ただし、他社の口座と損益通算をしたい場合や、損失の繰越控除(3年間)を利用したい場合は、確定申告をしたほうが有利になることがあります。
日本の証券会社:特定口座(源泉なし)または一般口座
証券会社で源泉徴収がされていませんので、年間の売買損益を自分で計算し、確定申告を行う必要があります。その税率は申告分離課税で20.315%です。同じ「上場株式等」の区分内(日本株・ETF・株式型投信など)で損益通算ができますので、損失が出た年度については、確定申告を行えば3年間の損失繰越控除が可能です。
海外の証券会社
インタラクティブ・ブローカーズやその他の米国ネット証券など、海外口座で米国株を売買している場合でも、日本の居住者であれば、その譲渡益は日本で課税対象となり、税率は基本的に申告分離課税の20.315%です。この場合、年間取引履歴をもとに自分で円換算して損益を計算し、必ず確定申告を行う必要があります。他の証券会社での日本株などと同様に、「上場株式等」の範囲内で損益通算や損失繰越が可能です。
米国株・米国ETF・米国籍投資信託のNISA口座
2026年も、2024年からの
新NISA制度は継続予定です。新NISA制度上で認められている米国株・米国ETF・投資信託などが対象となり、また非課税保有限度額(生涯投資枠)というルールに従いますが、NISA口座内で運用した場合、売却益(キャピタルゲイン)については、日米両国で非課税となるケースが多く、分配金・配当については米国側で源泉徴収課税が別途発生するものの、日本国内では非課税となります。
米国籍投資信託の税務上の扱い
日本の証券会社を介するかどうかで、税率が大きく異なる場合があります。
日本の証券会社で一般的に販売されている投資信託、いわゆる公募株式投資信託(外国籍ファンドも含む)の売却益は、「上場株式等」と同様に申告分離課税20.315%の対象となります。これらの投資信託は多くの場合、特定口座(源泉徴収あり)の対象となり、自動的に計算・源泉徴収されます。また、米国籍のミューチュアル・ファンド(投資信託)であっても、日本で公募投信として取り扱われているものについては、基本的にこの枠組みに該当します。
日本の証券会社を介さず、海外で直接契約したファンドや私募ファンド、特定のオフショアファンドなどは、日本の税法上、「上場株式等」の区分として扱われない場合があり、雑所得(総合課税)として課税される可能性があります。もし雑所得(総合課税)扱いとなった場合、所得税は累進課税(最大約55%:所得税+住民税+復興税)となります。また、一般的な「上場株式等」の区分とは異なり損益通算が認められないため、結果として税負担が大きくなることがあります。
米国株・米国ETF・米国籍投資信託の損益通算と損失繰越
米国株や米国ETFの売却益(キャピタルゲイン)は、日本株や日本ETFと同じ「上場株式等」の区分に含まれるため、日本株の損失と米国株の利益、あるいは米国ETFの損失と日本株投信の利益といったかたちで、同じ年内で損益通算が可能です。さらに、ある年度に「上場株式等」の区分で損失が発生し、その年度に確定申告(申告分離課税)を行えば、その損失を最長3年間繰り越して、翌年以降の同区分の利益(日本株や米国株など)と相殺することができます。
将来に向けた注意点
日本政府とその与党内では、
金融所得課税の一体化やその見直しについてたびたび議論されており、税率や課税方式の変更が議論される可能性があります。ただし、2026年1月時点で具体的にこの税率が変更されるという確定した制度変更は、私が参照できる範囲では公表されていません。
最後に
日本居住者が米国株、米国ETF、一般的な米国籍公募投信を売却した場合の売却益(キャピタルゲイン)には、原則として申告分離課税20.315%が適用されます。日本の証券会社の特定口座(源泉徴収あり)を利用していれば、自動的に源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です。ただし、有利な損益通算や繰越控除のために申告することも可能です。一方、海外の証券口座を利用している場合は、自分で円換算による損益計算を行い、確定申告をする必要があります。
新NISA口座内の対象商品(米国株・米国ETF・投資信託など)の売却益については、日米両国で非課税となるケースが多いですが、分配金・配当については米国側で源泉徴収課税が別途発生するものの、日本国内では非課税となります。また、一部の海外ファンドなどについては雑所得(総合課税)として扱われる可能性があるため、取扱いについては事前に確認が必要です。